一期一会
一期一会という言葉を胸にいだきながら過ごしているつもりでも、忙しさに流されてしまうこともある。
いろいろな場所でヨーガをさせていただく機会を持つようになるとたくさんの方々と袖ふれあうようになった。
あるクラスの年配のマダムは見るからに穏やかな方でいつも静かに他の方々の靴をそろえてから部屋に入ってきてくれる。
何年ヨーガを続けていても、「我が我が」と我欲のずいぶん強い人もいるなかで、彼女のあっさりした無我の動きは光をはなっているのだ。
みんなの邪魔にならないところに静かに座って、動きにくい身体で自分の出来ることだけをのびのびと行う。
最後にいつも静かに手を合わせて、「先生いつもありがとう」と話しかけてくれる。
部屋がほこりっぽいので始まる前に掃除していると、その次のときは私より早めに来て、そーっと掃除をしてくれている。
この方の生き方こそヨーガだといつも学ばせていただいている。
自己探求に走るあまり、ポーズの出来ばっかりを追い求めて、心配りが全く外に向かわない人が多い。何年どんなに濃度濃くヨーガを行じていてもだ。
「いつもみなさんの靴をそろえてくださって・・・」と私が言うと、いえいえとやさしく笑いながらマダムは言う。
「もう、この年になるとね、そんなにたくさん新しい方と出会うことも少ないのよ。
先生のクラスもあと何回受けられるかなと思っています。
だから毎回これが最後かもしれないと思ってとても大事に楽しんでいます。
ありがとう」と。
ヨーガは執着から手を離すことこそ解脱への道のように説かれている。
我欲から手をはなし、シンプルに生きることももちろん必要。
だけど、ヨーガという言葉はつながりという意味もある。
大地ともまわりの人を含むいろいろな生き物たちとも。
それこそがサムシンググレートとのヨーガ(つながり)であると思うのだが。
彼女のささやかなやさしい心配りでわたしの胸はとてもあたたかくなり、みんなにももっとこの気持ちを届けようと思う。
一期一会のこころで。
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