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2008年9月16日 (火)

イリュージョン

Nec_0251 昨日レッスンが始まる前にある方と話していてこの本のことを思い出した。

人生の季節の変わり目にいて、迷ったり心を決めかねたりしているときは、アンテナも敏感になっていろいろな言葉が心に響く。

「手をはなして流れることのできる者がもっとも遠くへいくことができる」というハワイの古い言葉になんだか勇気づけられたのですと彼女が言った。その言葉に思い出したのがこのイリュージョンだった。

ペラペラの薄い本だし、村上龍の訳し方もカジュアルで読みやすいから寝る前にでも面白く読める本だ。

「ある澄んだ川の底に小さな村があって、生き物は小石や小枝につかまって生きていた。しがみつく方法やつかまるものは様々だったが、流れに逆らうというのが彼らの生活様式の根本だった。生まれたときからそうしてきたのだから。

ある日生き物のなかの一人が『こんな風にしがみついているのはもうあきた。手をはなしてみようかな』とつぶやく。しがみついている人々は口々に、そんなことをすると傷だらけになって簡単に死んでしまうぞといった。でも彼はなんとなく手をはなしてみるのだ。

流れは彼を巻き上げたけれど傷を受けることなく彼は下流へ流れ始めた。下流の生き物たちは飛んでいる彼を眺めて『あいつは空を飛んでいるぞ、奇跡をおこしている、救世主だ』と追いかけ始めた。

『救世主なんかじゃない。あんたらと同じさ、思い切って手を離しさえすればいいんだ、流れはすくい上げてくれるよ。自由にしてくれる、手を離すんだ、それしかない』

それでもしがみついた岩から手を離すものはいなかった。彼を救世主と呼び、熱狂的に追いかけ始めた。人々は日一日と増え口々に願いを語り始めた。

そして彼はある日群集の前で『ええと、私はこの仕事(救世主)をやめます。自分が好まない道は歩くまいと思うのですよ。だから君たちも人に頼ったりせず自分の好きなように生きなさい。』

そして小さな飛行機のエンジンをかけてそれに乗り込み彼は旅に出てしまった。

・・・これがこの本のイントロダクション。ここからお話が始まるのだ。救世主が救世主をやめちゃうというなんともコミカルな面白い話である。どこかの本屋の店先で並んでいたらパラパラと秋の夜長に読むにも楽しめる本かと思う。

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