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2008年7月 9日 (水)

年輪

Photo 近くの病院に自転車で本を配達し出てきたところで、病院に入ろうとして杖をついてゆっくり歩いてきたおじいさんと目が合った。

「暑いですね」というと、「暑いねえ」とおじいさんが目を細める。私の自転車を見て、「ああ、あんたはさっきにぎやかな音をさせながらわしを追い抜いていった人か」という。

「にぎやかでしたか、自転車」

私の自転車はマウンテンバイクなのでチェーンカバーがなく、チェーンがむき出しである。そして雨に濡れてもあまり手入れせずにそのままほっていたら、このごろペダルを踏み込むたびにキュルキュルとかすれた音がしていたのだ。梅雨の時期に合わせてだんだん音が大きくなってきていたのだけれど、聞き流していた。

「もうすぐなあ、チェーンが切れる音がしとる。わしは60年自転車治してきて、もうそれもやめたけど、もうすぐ切れるなあ、そんな音しとるね。・・・ふふふ」とおじいさんが微笑みながら病院に入っていった。うわあ、怖い。そんな人が言うからにはチェーンは本当にいつ切れてもおかしくないぐらいなのだろう。本屋に帰っていそいでクレ556をかけた。

あんなに年をとっても耳でわかるんだと驚いた。プロとはそういうものなのだろう。

ふと思い出したのが、昔四万十川にカヤックで川くだりに行ったときのこと。天候が荒れて大風が吹いていたけれど、川原にテントを残置したままカヤックで川を下った。その後川原の戻ってみると、わたしのテントがない。まわりを見渡すけど、テントの中にいれたザックごとない。ここの場所じゃなかったのかなあとか誰かが持っていったのかなあ、風でとんじゃったのかなあと慌ててキョロキョロする。

小さな川舟で漕いでいるおじいさんに、「実はテントが飛んでいっちゃったみたいなんですけれど、おじいさん見ませんでしたか?」と尋ねた。「テント?」というので、こんな色でこんな形なんですと一所懸命説明する。しばらくしておじいさんが、「この方向に」と遠くの川面を指差す。「普段は見えん岩が見える」という。遠すぎてわたしにも岩なのかなんなのかわからないぐらいである。でもまあ試しにカヤックで下流まで漕いでいってみると・・・水没したわたしのテントが50センチほど川面から出ているのだった。川舟でついてきてくれたおじいさんに手伝ってもらって、なんとかテントから水を出しながら舟に引き上げた。

長年毎日まいにち同じ川面を眺めてきたおじいさんだからわかるのである。そのときもすごいなあ年輪の力はと静かに感動したことをふと思い出した。

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